メイド・イン・ナガサキVol.33 嘉久房窯の舌出し三番叟【最終回】一子相伝の技を宿して… どこか憎めない愛嬌のある表情と、ユーモラスな立ち姿に、思わずページをめくる手を止めた方もいるのではなかろうか。ひと目でグッと心を掴むこの人形の名は、「舌出し三番叟(しただしさんばんそう)」―白磁の染付や透かし彫りなどで高い技術を誇る、三川内焼の伝統的な玩具である。くるくると首が動き、舌が出たり入...
メイド・イン・ナガサキVol.32 富田一彦さんのデザイン暮らしに楽しさや、喜びを 来年1月。長崎県美術館で、『卜ミタリアー富田一彦の世界』という展覧会が開催される。『トミタリア』とは“トミタ”と“イタリア”を組み合わせた造語。長崎県出身で、20年以上イタリアを拠点に活動してきたデザイナー・富田一彦さんのこれまでの仕事が、一同に揃う展覧会だ。
メイド・イン・ナガサキVol.31 岩永梅寿軒のぬくめ菓子長崎くんちの縁起菓子 毎夜長崎の街に響く、くんちのお囃子やかけ声―。思いがけずその練習の場に出くわすと、あの華やかな舞台の裏側を垣間見たようで、長崎人ならば誰しも胸打たれるものがある。9月を過ぎる頃にはその声にも気迫が満ち、男たちの熱く勇壮なかけ声を耳にする度、今年もくんちの季節がやってきたとワクワクせずにはいられない...
メイド・イン・ナガサキVol.30 雲仙焼雲仙の自然が生み出す、唯一無二の輝き まるで宇宙を覗いているよう―。そう称されるうつわがある。「曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)」。南宋時代(1127~1279年)、中国福建省建陽市にあった建窯で作られたとされ、現存するものは世界でたった3点。その全てが日本にあり、国宝に指定されている。黒の釉薬の上に、光の角度...
メイド・イン・ナガサキVol.29 マルヒロの「ものはら KURAWANKA Collection」波佐見焼の歴史を物語る“地層”を重ねて… 「ものはら」―。登り窯のそばにある、焼き損ないの製品を捨てる場所のことを、そう呼ぶそうだ。長い年月を経た「ものはら」には、焼き物の“地層”ができ、積み重ねられた歴史と伝統技術の上に“今”があるということを、一目で伝えてくれる。
メイド・イン・ナガサキVol.28 瑠璃庵の長崎びいどろ長崎びいどろ。そのかつての輝きを求めて 江戸~明治前期にかけ、日本でつくられたガラス=和ガラスは、その時代“びいどろ”と呼ばれていた。ポルトガル語でガラスを意味する“Vidro”がその語源。とりわけ、中国の製法を起源とし、17世紀後期から長崎で製作が始まったガラスは“長崎びいどろ”と呼ばれ、その美しさで全国の人々を魅了...
メイド・イン・ナガサキVol.27 茂木一○香本家のびわのお菓子茂木びわの季節です。 長崎市の南東部、橘湾に面する港町・茂木。初夏の頃、キラキラと輝く海を眺めながら、緑豊かなこの町の海岸線沿いをドライブすれば、ひと房一房ていねいに袋かけされたびわ畑の風景を目にすることができる。全国的にも名高い「茂木びわ」の収穫期、5月下旬~6月中旬頃の風物詩だ。
メイド・イン・ナガサキVol.26 唐あくちまき長崎ならではの、節句菓子 端午の節句が近づくと、長崎の和菓子屋さんや饅頭屋さんの店先に「唐あくちまき」が並び始める。「鯉菓子」のような見た目の華やかさはないが、端午の節句に欠かせないものとして古くから受け継がれてきた。そもそも、「粽(ちまき)」のルーツは中国にあり、その誕生にはこんな故事がある。
メイド・イン・ナガサキVol.25 島原木綿幻の反物を、織りつないで。 何とも言えない味わいを持つ、深い深い藍の青。そこに走るのは、織り手の個性を映す色とりどりの縦縞。きゅっ、と目が詰まり、うっすらと光沢を放つ美しい織物…それが「島原木綿」だ。一度は途絶え、“幻の反物”とも呼ばれた、島原市の三会(みえ)・大三東(おおみさき)・湯江(ゆえ)地区に伝わる手仕事である...
メイド・イン・ナガサキVol.24 岩永梅寿軒の寒菊目に浮かぶは、雪積もる菊。 ほわり、はらり、と舞い積もってはじんわりと融け、すうっ…と消えゆく儚い雪片―と言えば、伝わるだろうか。「寒菊(かんぎく)」と名づけられたこの菓子が見立るのは、雪化粧をまとった菊の花や葉。ほんのりと青みさえ感じるような、混じり気のない澄んだ白と、ほわほわと淡い輪郭を見つめていると、冬の情景のひ...