ながさきプレスWEBマガジン

  • 第4回 「西海市 八ノ子島」

     西海の静かな港・横瀬浦にぽっかりと浮かぶ八ノ子島。小さな島の頂上には白い十字架が輝き、浦全体を神聖な空気で包み込むような、不思議な雰囲気を放つ。こんもりとした愛らしい形は、あの司馬遼太郎も著書『街道をゆく』の中で、「松露饅頭のようにかわいい」と称したほどだ。

     1562年、当時の領主で、日本で初めて洗礼を受けたキリシタン大名である大村純忠により、南蛮貿易港として世界に開かれた横瀬浦。船は八ノ子島の十字架を目印に入港し、港は全国から集まった貿易商人やキリスト教徒、そしてポルトガル人たちで賑わったという。のちに織田信長や豊臣秀吉とも会見し、戦国時代の貴重な資料となる『日本史』を記したポルトガル人宣教師、ルイス・フロイスも、この港から日本に上陸した。

     

     しかし横瀬浦の繁栄も長くは続かず、内乱によって焼き討ちにあい、わずか一晩のうちに消失。一年半余りの短い歴史に幕を閉じた。以来信者は一人としておらず、当時を伝える建造物や史跡等も失われてしまったが、それもまた、日本でのキリスト教の歴史を物語るひとつの形となっている。

     今年は横瀬浦開港450周年。かつての繁栄が続いていれば、長崎の中心となっていたかもしれないこの場所で、静かな歴史の息吹を感じてみたい。

    この十字架を目指して…

    当時の歴史を語るものは失われたため、この十字架も1962年に復元されたもの。空と海の青に、くっきりと浮かぶその白い十字架は、自分の目で見ると想像よりも大きい。この十字架を目指したポルトガル人たちも、そんな風に驚いただろうか…。

    歴史の舞台は静かで小さな浦

    八ノ子島からすぐの、小高い丘にある〈横瀬浦公園〉の展望棟からは、港全体を見渡すことができる。さわやかな潮風を感じながら、この小さな歴史の舞台に思いを馳せて。

    Return Top