ゆらりゆらりと柔らかく揺らぐ、和ろうそくの灯。昔はこの灯のゆらめきに、「仏さまが喜んでいる」と、故人を偲ぶ心を重ねたそうだ―。
島原の地で、和ろうそくのもととなる「木蝋」の伝統的な製法を守り続けている〈本多木蝋工業所〉。私たちが見慣れている「洋ロウソク」が石油系の原料を用いるのに対し、木蝋が使うのは「櫨(はぜ)」の木になる実だ。実を砕き、蒸し、日本ではもうここだけという「玉締め式圧搾機」という機械でろう分を搾り出す。櫨に含まれているろう分は35~40%程だが、この「玉締め式圧搾機」ではその半分を取り出せれば良いほう。しかし純粋な木蝋づくりでは残ったかすを堆肥や燃料に使え、土に戻すことができ、その大地が再び櫨を育てるという循環型のシステムを守ることができる。これは現在主流となっている、化学薬品を使った効率の良い抽出式の機械にはできないことだ。また、櫨の木は火山灰に強く、1792年に普賢岳が爆発して大被害を受けた際、島原藩は蝋づくりで財政を立て直したそうだ。
3代目の俊一さんは、環境にやさしく災害にも強い伝統的な木蝋づくりが今こそ求められるはず、と日々木蝋づくりに励む。そのまなざしが守る、やさしくて懐かしい和ろうそくの灯を、ぜひ灯してみてほしい。
つくり手:本多俊一 HONDA SHUNICHI
社会科の先生として地元の中学校で教鞭をとるかたわら、家業である木蝋工業所を受け継ぐ3代目。木蝋づくりで出る「ろうかす」を肥料にして畑で野菜を作ったり、ヤギやメダカを育てたりと、木蝋だけでなくいろいろなことを学べる、地域に根ざした生涯学習施設にしていければと語る。
本多木蝋工業所
昭和25年創業。日本で唯一、伝統的な「玉締め式圧搾機」による木蝋づくりを続けており、ろうの歴史や作り方を学べる資料館も併設。ろうそくづくり体験もできる。
・「島原燭台」瑠璃釉彩12,000円、染錦黄彩花絵14,000円
・「和ろうそく」サイズ・絵付けの有無による。1本200円~
コメントを投稿するにはログインしてください。