光に透けて、とろけそうなほど繊細な輪郭。つややかな白磁の肌。華奢に見えても芯のある、凛としたたたずまい…。このデミタスカップは、みかわち焼の窯元〈平戸洸祥窯(こうしょうがま)〉の18代目・中里太陽さんが、かつて米国への輸出用として作られていたカップをもとに復元したものだ。
取っ手をつまむように持ち上げると、そのあまりの軽さにハッとする。厚さはわずか1ミリほど。光を通すほど薄く仕上げる技法は「薄手(うすで)」と呼ばれ、江戸末期から1950年代頃の輸出向けの洋食器に多く用いられた。
みかわち焼の歴史は約400年前まで遡る。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、朝鮮から連れ帰った陶工たちが祖とされ、平戸藩の御用窯として栄えた。「平戸焼」とも称されるのは、そのためである。藩の厚い保護を受けていたため、採算にとらわれず技術の粋を尽くした名品が作られ、明治に入り藩が解体されると、それぞれの陶工たちが自らの得意とする技術で独立した。これが現在30ほどある窯元のおこりである。これほどまでの歴史を背に、「自分が一人のつくり手として注目されることよりも、みかわち焼という伝統が続いていくことの方が大切」と語る中里さん。もちろん現代に即した新しいものづくりも行っているが、それは奇をてらったものをつくることでも、目新しいものをつくることでもない。「あくまで400年培われてきた伝統を重んじながら、そこに自分らしさを表現できたら…」。中里さんが復元するデミタスカップからは、そんなみかわち焼の伝統に対する敬意と、それを継承してゆく意志が感じられるようだ。
つくり手:中里太陽 NAKAZATO TAIYO
平戸洸祥団右ェ門窯18代目の窯主。伝統を重んじながらも、子どもや女性、高齢者など誰もが使いやすいデザインの日用食器など、新しい作品づくりを行う。東京などで個展や展示会を開催するなど、精力的に活動している。
平戸洸祥団右ヱ門窯(ヒラドコウショウダンウエモンガマ)
佐世保市三川内町889 TEL:0956-30-8606 9:00~17:00 不定休
http://www.kohsyo.co.jp/
※工房及びギャラリーを併設。訪問の際は事前に確認を
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