昔も今も、女性を美しく引き立てる魔法のようなジュエリー、真珠。ひと粒の中に、凛と澄んだ白や淡いピンク、グリーンなどの繊細な色がゆらめき、まるでオーロラのように魅惑的に輝く。見つめるほどに、深く吸い込まれそうな神秘的な色合いは、決してイミテーションには出せない、自然の美しさだ。
実は長崎県は、三重県や愛媛県などと並ぶ日本有数の真珠生産地。天候などに左右されるため生産量は毎年異なるが、年によっては日本一の生産量を誇っている。大村湾や対馬など、真珠を体内で育てる「アコヤ貝」の生育に適した海を有するためだ。
大村湾の海辺、琴海地区にある〈長崎真珠店〉は養殖から加工、販売までを一貫して手がける真珠店。販売店のすぐそばには養殖場があり、生産の現場を見学できる。たったひと粒の美しき真珠が生まれるまでの、工程や手間は計り知れない。まずは2年程、真珠となる「核」を入れられる段階までアコヤ貝を生育。育った貝に、この道30、40年の熟練の達人たちが、核を入れてゆく。その作業はまるで「手術」。身を傷つけず、素早く的確に核を入れなければ、貝はすぐに死んでしまうのだ。その後、核の周りに「巻き」と呼ばれる真珠層が形成され、早ければ1年弱、長いもので2、3年後に玉出し。長く育てるほど真珠も大きくなるが、途中で貝が死ぬリスクもあるため、引き揚げのタイミングには気を使う。数年単位で手をかけて育てても、天災一つで全てが駄目になる…そんな世界。無事、玉出しにたどりついても、ひと粒ひと粒の質は様々で、いびつなもの、傷がついたものも少なくない。「かたち」「巻き」「テリ」「キズ」「色」。真珠のグレードを決める全ての要素で、最高の品質を誇る「花珠真珠」は、全体のわずか2~3%。その花珠真珠がネックレス一本分揃うということが、どれほど奇跡的なことかと感嘆させられる。
中国産の安価な真珠やイミテーションが溢れる中、決して安泰ではないという真珠業界。3代目の深江さんは、「それでも長く続けることがブランドになり、長崎の真珠を守ることになる」と語る。養殖場にはすでに、いずれ4代目を継ぐ若き息子さんの姿があった。折りしも6月の誕生石は「真珠」。ひと味もふた味も違う本物の輝きを、目にしてほしい。
長崎真珠店
長崎市長浦町224-12 TEL:0120-410-804 10:00~19:00 火曜休 Pあり
http://www.nagasaki-shinju.com/
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