「カーン、カーン……」
時の鉦が〝ヘトマト〟の始まりを告げる。崎山地区に伝わるヘトマトは、小正月の日に開催される伝統の祭り。少子高齢化や過疎化が進んでいる近年は、若者たちが休みをとりやすい1月の第3日曜日に開催されている。その起源も名前の由来も不明だが、今日まで大切に受け継がれ、国の重要無形民族文化財に指定されている。
祭りは新婚の女性による華やかな羽根突きで始まる。その後、 締め込み姿で全身に〝ヘグラ〟という墨を塗った若者たちが登場し、激しく藁玉を奪い合う「玉せせり」、「綱引き」と続き、最後に大草履を山城神社に奉納する。大草履の奉納では、近くにいる娘さんをつかまえて草履に乗せ何度もゆする。娘さんたちの歓声で、祭りは一層賑わいを増す。若者たちは、見物している住民や観光客にもヘグラをつけて回る。ヘグラから逃げ回るのも、この祭りの楽しみの一つなのだ。
帰り道でお年寄りに声をかけられた。「あらー、いっぱいつけられてー。今年一年病気せんよなー」。ヘグラには、魔除けの意味もあるという。一年間の無病息災。それを信じて家路につこう。今年のヘトマトは2018/1/21(日)に開催される。
profile
矢口 美保子 五島市在住。趣味は、茶道と読書。「軽自動車のマニュアル車に乗っています」と言うと、ほとんどの人が驚くという。高校時代の剣道仲間からの突然の電話により、島のコラムを書くことに。これには、本人が一番驚いているのだとか。
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