史跡の国宝とも称される「国指定特別史跡」の長崎県第1号が対馬にあることを、皆さんはご存じだろうか。
対馬の中央に広がる浅茅湾の南岸から、北に2キロほど突き出した巨大な岩塊を、地元では城山と呼んでいる。667年、唐・新羅の脅威に備え、三方を海に囲まれたこの要害の地に、場所によっては高さ6メートルを超える石塁が延長2.2キロにわたって築かれ、東国から国境守備兵・防人が派遣された。この地は日本書紀に記載された古代山城で、今年で築造1350年を迎える特別史跡・金田城跡だ。
実は城山山頂には、日露戦争時代の砲台跡がある。7世紀には古代山城と防人、明治期には砲台と砲兵部隊が配置され、1200年の時が過ぎても、まったく同じ役割を果たしていたことになる。
登山口から山頂までは、明治期に整備された緩やかな軍道が約2.6キロ続き、途中数か所で7世紀の石塁と交錯する。往復3時間程度で、山頂からは朝鮮半島方向の水平線や浅茅湾を一望でき、国境の島・対馬の特異な歴史と景観を体験できるイチオシのスポットだ。
profile
西 護 対馬観光物産協会に勤務して、今年で11年目。国境の島・対馬に、家族や犬、猫と共に暮らしている。趣味は、対馬の山岳・砲台・神社などの情報を収集・発信すること。今年発行された「長崎県の山(山と渓谷社)」で、対馬の山を担当している。
*ながさきプレス2017年10月号掲載
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