長崎のキリスト教史は
昔も今も波乱万丈
土地に眠る物語を知り 世界遺産に強くなる
この本が出るころには、もう決定しているのでしょうか。ユネスコの世界文化遺産に登録されるという「長崎・天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。土壇場で待った!がかかり長く待たされた関係者にとって、まさに悲願でした。でも決定が延びたぶん、準備時間を長く持てたので、その間にガイドを育成したり、見学システムを整えたり、資料館をつくったりできたという関係者のお話です。まさに「満を持して」。
長崎市立桜町小学校の裏手にはサント・ドミンゴ教会跡資料館が併設されています。17世紀の長崎に10以上もあった教会は禁教時代に破壊されて今は影も形もありませんが、小学校の建て直し工事中にサント・ドミンゴ教会の基礎が発掘されました。影は消えても形が残っていたわけです。この資料館の中には遺跡のほか、土層断面パネルがあり、キリシタン代官だった村山等安が自分の土地に建てさせた教会の時代と、その後の髙木代官屋敷時代がミルフィーユのように重なって、その上に小学校があるのがわかります。
歴史の営みはそのまま私たちが立っている地面につながっているのです。あとは長崎人が、この世界遺産の意味や意義をどのくらいワタクシゴトにできるか?なんだけれど、正直、信者でない限り、キリスト教が長崎で400年間歩んできた「伝来・迫害・復活」の歴史や、潜伏キリシタンとカクレキリシタンの違いを即答できません。とはいえ、どっぷり勉強する時間はなし。それでも、外からお客様が来たときに少しは知った顔で解説したいものです。
漫画で読む。訪ねてみる。講演を聴く。お好みで
そんなときにお勧めしたいのが『漫画で読む長崎キリシタン史 愛のまち 夢旅日記』(西岡由香著)です。平戸、口之津、有馬、大村、外海など長崎県内各地のキリシタンの重層的な歴史をわかりやすく、ドラマチックに描ききった足掛け5年の力作です。世界遺産の構成資産は「○○集落」という表記になっていますが、その集落の信仰の象徴こそが教会。
『長崎游学2 長崎・天草の教会と巡礼地完全ガイド』(カトリック長崎大司教区監修)は、島の小さな教会から構成資産集落の教会、大浦天主堂までガイドしており、日本語版以外にも英語版、韓国語版を出版しています。
『旅する長崎学1~6』はキリシタン文化シリーズですが、中でも6は1~5の総集編なので全体を総括できるダイジェスト版。
また、現在、カトリック大司教区の教会は内部が撮影禁止になっており、教会を訪れたときの感動を記録に残すことができません。ならば写真集の出番でしょう。『珠玉の教会』は建築写真家でもあった三沢博昭氏の遺作写真集。
また『ステンドグラス巡礼』は教会のステンドグラスにしぼった松尾順造氏の写真集です。どちらもさすがプロフェッショナルな仕事ぶり。教会って訪れる季節や時間によっても表情を変えるのです。
ところで7月、このテーマでもって長崎文献社主催の文化フォーラムを開催します。関連書籍の販売もあるので、ぜひおでかけください。
文・川良 真理
〈長崎文献社〉副編集長。
中通りの〈長崎文献社〉アンテナショップ書店「ブック船長」にも時々出没します。
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