教えてくれた人
早稲田 佳子(ワセダ ヨシコ)さん
茶道(表千家茶道)や料理(懐石料理)などを学べる〈花滴庵〉主宰。長崎県内で和の文化を伝える教室を開いているほか、季節の茶会などを行っている。
花滴庵(かてきあん)
道教室(表千家流)や料理教室(懐石料理)、挨拶の仕方などを学べる和の講座があり、和の文化を通して、美しい作法や暮らしに使える知識を習得できる。
お正月に向けて行う準備や、しておいた方が良いことを教えてください
十二月八日を二月八日の“事始め”に対して“事納め”といいますが、地方によりお正月の神事が始まる事から“コトハジメ”の言い方もあります。関西では十二月十三日を正月準備にとりかかる“年用意の事始め”と呼びます。商家や花柳界(かりゅうかい)では、主家筋(しゅかすじ)へ鏡餅を持参し、一年の挨拶をするもので年末に行う華やかな行事です。また、お正月を迎えるための準備として大掃除も大切。特に、すす払いは歳神様を迎える儀式で、“煤取節句(すすとりせっく)”と呼ばれる大切な行事です。 この日には、神棚や仏壇もきれいにして古いお札や絵馬を片付け、一年の埃や穢れを清めてください。障子や襖の張り替えも早めがいいでしょう。お正月用のお花もお花屋さんに早めに注文した方が無難です。以前は新年を改まった気持ちで迎えられるよう、下着や履物を用意したりもしていました。それから、不要なものを処分すれば、来年に出合う新しいモノのスペースも確保できます。これからお正月に向けて多忙になってきますので、年末までの予定をたて、日程表を作ると段取りよく、片付け準備ができると思いますよ。
お歳暮を渡す際に気をつけることはありますか。加えて、喜ばれるお歳暮はどのようなものですか
お歳暮は自分で足を運んで、御礼の言葉と共に手渡しをしたいものですが、配達を頼むのであれば、感謝の気持ちが伝わるように、カードやお手紙を同封したいものです。お店が多忙でカード等を預かってもらえない場合は、電話や葉書(はがき)でお礼の気持ちを伝えておくのもいいと思います。お正月に使ってほしいものを贈る場合、年末お届を予(あらかじ)めお知らせしておいた方が、相手方のお正月準備と重ならなくていいでしょう。喜ばれるお歳暮はやはり、鍋用の食材一式だと思います。少々お値ははりますが、すき焼きやしゃぶしゃぶ用のお肉やうどんすき、湯豆腐のセットもいいかもしれません。体を温めるには家族団らんで食事を楽しむのが一番だと思いますので、材料を自分でみつくろい、箱に入れてお届けするのも喜ばれるお歳暮でないかと思います。
冬至とは主にどのようなことをするのでしょうか。また、長崎で冬至を楽しめる機会はありますか
【冬至】…一年の中で、一番昼が短く夜が長い日。中国の陰陽でいうと、陰の力が最も強まり、陽の力が最も弱まる時。
今年の冬至は十二月二十二日。この日から昼の時間が少しずつ長くなるので、冬が去り、春が来ることを“一陽来復(いちようらいふく)”といいます。冬至を過ぎると、明るい生命の溢れる陽が復活していくのです。ただし、寒さはこれからが本番。風邪をひかず、健康に過ごせるように昔の人達は冬至の行事を考えました。料理では、南瓜(かぼちゃ)の料理や小豆粥(あずきがゆ)が代表的です。南瓜は栄養がたっぷりで、小豆粥も体を内側から温めると共に、お粥の中の小豆が厄払いになるそうです。 また、“ん”がつく野菜も運気を高めるために良いとされてきました。昔は南京(なんきん)と呼ばれた南瓜を蒟蒻(こんにゃく)等と一緒に煮た煮物やケンチン汁を食べたりもします。蒟蒻も体の毒素を流し、芯から温まることが出来るため、これからの寒さを健康に過ごすためには良いと思います。柚子をお風呂に浮かべて体を温めたり、香りで癒されたりするのもいいですね。長崎の諏訪神社では、午前十一時から“冬至祭”が行われます。太陽の恵みに感謝をし、無病息災を祈り参拝者に南瓜の煮物が振る舞われるので、足を運んでみてください。
除夜の鐘の由来と長崎ならではの楽しみ方を教えてください。
除夜は一年の終わりではなく、すでに新しい年の始まりです。年越しで除夜の鐘を聞き、新年を迎えることができるのは、無事に一年が終わり、続けて新しい一年の始まりに足を踏み入れるおごそかな時の流れだと思います。長崎の各お寺では、除夜の鐘を撞かせてもらい、おぜんざい等のもてなしもあります。寺町の周辺はお寺が多く、除夜の鐘を楽しむことができ、更に興福寺では、除夜の鐘こそないものの、「除夜釜」というお茶会を行っています。お汁粉が振るまわれ、お抹茶でのもてなしがあります。雰囲気の好きなお寺を選んで新年を迎えるのは風情のあることだと思います。
食材の歳時記 大根
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