今月のお悩みは…
むし歯ができないようにするには、どんなことに気をつければいいですか?
<回答者>
渋谷歯科診療所 渋谷 昌史先生
長崎県歯科医師会 専務理事。
平成元年に長崎大学歯学部卒業、歯科医師になって来年で30年。歯科医師会の仕事に携わるようになって十数年、地域歯科保健を担当。
まず最初に、どうしてむし歯ができるのか。その仕組みを簡単に教えていただけますか?
渋谷 はい。口のなかは普段、理科の授業とかで習う「中性」に保たれています。それが食事をしたり甘いものを食べたりすることで「酸性」になって、歯が徐々に溶けて菌が侵入していきます。表面のエナメル質は硬いので、簡単には壊れません。でも、その下の象牙質までいくと一気に感染が広がり、エナメル質が壊れて穴が空きます。この段階までいくと痛みが出ますので、どうしても治療に時間もかかりますね。
私も、痛くなってから慌てて病院に行った経験があります。その時期はとても仕事が忙しかったんですが、それもむし歯に関係しているんですか?
渋谷 そうですね。私たちの口の中が「酸性」になると、唾液が「中性」に戻す働きを自然としてくれるんです。でもストレスや緊張で唾液が減ると、口の中が乾燥して「酸性」の状態が長くなってしまいます。また、甘いものにも要注意です。チョコレートなどお菓子はもちろん、気をつけたいのが飲み物。ジュースや缶コーヒーだけではなく、実はスポーツドリンクも糖質が多く、口の中が「酸性」になるんです。喉が渇くとつい頻繁に飲んじゃいますが、何事もほどほどが大切です。
そうしたむし歯になる原因を取り除くには、やっぱり歯みがきが肝心なんですか?
渋谷 毎日の歯みがきは必須です。溶けた歯を元に戻す自然治癒作用を「再石灰化」と言うのですが、歯みがきは汚れを落とすだけではなく、それを促してくれます。また歯みがき剤に含まれているフッ化物が歯を強くしてくれます。ただ、やっぱり一番大切なのは定期的に通院することです。歯みがきだけで蓄積した汚れをすべて取ることは難しく、きちんと歯科医院で診てもらい、歯科衛生士さんに専門的な清掃をしてもらうことで歯が健康に保たれます。皆さんどうしても歯科医院に行くのは痛い、つらいという印象があると思いますが、それは症状が悪化して〝治療〟のために訪れるからです。〝予防〟のために訪れたら、スッキリして気持ちいいですよ。
定期的に通うとすれば、だいたいどのくらいの期間で足を運べばいいのですか?
渋谷 もちろん健康状態や年齢、歯の状態によって異なりますが、健康な人でも1年に1回は受診しましょう。大切なのは予防のために通う、かかりつけの歯科医院を見つけることです。私たちが診ているのは、むし歯だけではありません。姿勢や噛み合わせ、さらに普段の仕事や生活習慣まで。歯の状態には、その人の暮らしが密接に結びついています。それらも踏まえた上でどうすればいいのか、一緒になって考えていく。それが私たち専門家の役割だと思っています。
まとめ
・食事をすると口の中が「酸性」になるが、唾液が「中性」にもどしてくれる
・歯みがきをすることで清潔にし、さらに自然治癒力を高める
・定期的な通院が大切!生活習慣も含めて歯の健康を考える
渋谷先生からのワンポイントアドバイス
毎日の歯みがきは、そのやり方も大切です。歯ブラシを手全体で握ってしまうと、余計な力が加わって口の中を傷つけたり、細かい部分までみがけなかったりします。オススメは「ペングリップ」。ペンをもつように人差し指と親指で支えると、歯にもやさしく手も楽に上下左右動かしやすくなりますよ。
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