最初に、お薬手帳の役割について教えてください。
一番の役割は、その人が過去から現在までどんな薬を服用しているのか、一元的に管理することです。症状に合わせた薬を適切な量で服用することが大切で、同じ薬が重複してしまったり、組み合わせによっては、むしろ体調が悪化する可能性もあります。そうしたことを防ぐために、いつ・どこで・どんな薬を処方されたのか、把握することが必要なんです。
もし以前に服用したことのある薬でも、その必要性は変わりません。また、複数持っている場合は一冊にまとめることもできるので、薬局の窓口でご相談ください。その場合も古いお薬手帳はとっておきましょう。
薬の組み合わせによって、からだに悪い影響を及ぼすこともあるんですか?
はい。例えば処方する際にお薬手帳がなくて、帰宅してから薬を服用すると吐き気が生じてしまった患者さんがいました。次に来たとき家にあった手帳を持参してもらうと、ほかの薬局で処方した薬と重複していました。
痛み止めや抗生物質、胃薬などには複合的に作用する薬が多くあり、また別の薬であっても似たような作用を及ぼす薬もあります。症状ごとにバラバラで処方していると効果的な改善ができませんし、薬で不調となってもその原因がわからないと、余計に不安になってしまいますよね。
災害時にもお薬手帳があったほうがいいと聞きました。
その通りです。大きな災害の場合、避難所で診療や薬の処方が行われます。しかし普段どんな薬を服用しているのかがわからないと、適切なものを渡すことができませんし、診療に時間もかかってしまいます。記録がきちんとわかる手帳があればスムーズにいきますし、また手帳にはアレルギーや副作用の有無が記載してあるので、緊急時にはカルテの代わりになって活躍してくれます。避難用の持ち出し袋と合わせて、緊急時にはお薬手帳を持参しましょう。
最近よく耳にする「電子お薬手帳」とは何ですか?
「電子お薬手帳」はケータイのスマートフォンアプリで、簡単にお薬の服用履歴を管理できる便利なものなんです。日本薬剤師会が提供している「eお薬手帳」(http://www-eokusuri.nichiyaku.or.jp/)がオススメです。家族全員分の入力もできて操作も簡単。さらに常に持ち歩くスマートフォンだからこそ、いざという時に役に立ちます。バックアップ機能もあるので故障や機種変更でも大切なデータは消えません。
利用登録は無料で、お薬情報の用紙に記載されているQRコードを使えば、入力もあっという間です。まずは気軽にアプリから活用して、紙のお薬手帳にも慣れ親しんでいただければと思います。
・お薬手帳は一冊にまとめて、服用履歴を一元的に管理
・同じ薬でもきちんと記載が必要。災害時にも役に立つ
・ケータイアプリの「電子お薬手帳」をチェック!
一ノ瀬先生からのワンポイントアドバイス
今は“医薬分業”の時代で、薬は専門の薬剤師が深く関わることが多くなっています。お医者さんに伝えているから話さなくても大丈夫と思わず、かかりつけ薬局の薬剤師さんともコミュニケーションをとることで、健康にもつながります。薬のことはもちろん、毎日の生活で気になることなどお気軽にご相談ください。
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